差別が怖くて周囲に言えず、人と関わらずに独りで生きてきた。ずっとずっと孤独だった」。大阪市西成区に住む詩人の長谷忠さん(92)は90歳になる直前の2018年8月、初めて周囲に自分が同性愛者だと打ち明けた。LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案は6月、東京五輪前の通常国会での審議に期待がかかっていたが、提出見送りになった。だが長谷さんは「誰もが生きやすい差別のない世界に一歩でも進んでほしい」と今後の展開に期待を寄せる。
同性愛は「病気」という時代
1929年、香川県高松市で、医師の父と看護師見習いだった母の間に生まれた。父には正式な妻がおり、いわゆる非嫡出子だった。父と会ったのは記憶にある限り、数回程度しかない。
小学校低学年の時、男性の先生を好きになった。この頃には「ほかの男の子たちとは違い、自分は男性が好きなのかもしれない」と自分が同性愛者だと感じ始めていたが、当時は「同性愛は病気」として扱われていた時代。しばらくして確信に変わった後も、家族には悩みを打ち明けることができず、ずっと心に秘めて生きてきた。
高等小学校を経た後は、モールス信号で電報を打つ訓練のための学校に通い、独り満州に渡って通信士や少年軍属として働き、そこで敗戦を迎えた。
玉音放送を聞いてうなだれたり、泣きだしたりする人がいる中、長谷さんは湧き上がる喜びで打ち震えていた。自身の性格からして、軍隊のように規則でがんじがらめに縛られ、自分で何も決められない生活が大嫌いだった。「やっと自由になれる!これで日本に帰れる!」と思った。
しかし、日本に戻るまでは苦難の連続だった。満州では中国国民党と共産党による内戦が始まっており、激しい市街戦に遭遇することも。近くで銃声がしたかと思うと、目の前で男性が倒れていたこともあった。「自分も撃たれるのでは」と怖くて、とっさに身を隠し、何時間も身動きすらしなかった記憶。満州にはロシア兵もいて、モールス信号の道具など全てを略奪された。職を失い、食べ物もままならない生活が続き、がりがりに痩せ、いつも下痢ばかりしていた。
ようやく引き揚げ船に乗ることができ、1946年9月、香川県に戻った。その後は倉庫作業や工場内で氷を運ぶなどのさまざまな肉体労働に従事してきた。同性愛者である自分に自信がなく、周囲に知られるのを恐れていた。仕事仲間との込み入った会話はなるべく避け、恋人はおろか、気を許せる友人もいなかった。
孤独を癒やした詩や小説
「自分は同性愛者だ」と堂々と宣言できたのは文学の中だけだった。職場でも、独り暮らしの狭い部屋でも、小学校時代からずっと好きだった詩を、頭の中でぐるぐると考え続けていた。
投稿がきっかけで詩人としての活動を始め、64年に詩集「母系家族」を出版。2000年には自身の半生を赤裸々に描いた小説「私生子」などこれまで数冊の本も出してきた。詩や小説を考えている間だけは、目の前のつらい現実を忘れることができた。
だが、それらの活動や告白はペンネームだったからできたこと。現実の世界では、何をするにも殻に閉じこもって生きてきた感覚だ。「自分がいると、普通に暮らしている兄弟姉妹に迷惑がかかる」。いつしか家族とも疎遠になっていた。
自然にカミングアウトしていた
89歳になって人生の転機が訪れた。18年8月の暑い夏の日だった。当時住んでいた大阪府東大阪市で、大阪市西成区のボランティア団体「紙芝居劇むすび」の公演を目にした。
むすびは「人と人とを結ぶこと」を目的に設立され、さまざま事情で孤独に暮らす高齢者同士が助け合いながら活動している。見る者を楽しませるだけでなく、演じる者も、活動を通して生きがいを見いだしていく。
長谷さんの目には、80歳近い老人たちが試行錯誤しながら役になりきり、物語を進める様子が本当に楽しそうに映り、「自分も参加してみたい」と思い立った。素のままの自分が受け入れられる気がした。
「私はゲイですが、参加できますか」。紙芝居が終わった後、その場で参加を申し込んだ。これがカミングアウトだということは、後になって会のメンバーに指摘されるまで気付かなかった。
むすびの演目は、桃太郎などよく知られた昔話のほか、オリジナル作品もある。特にお姫さま役などを演じている時、「自分は男ではなく、女なんだな」と実感する。やはりこういう役が好きで、得意なのだ。
劇団の活動は、週に1度の集まりで物語を考えたり、紙芝居の絵を描いたり、小道具を作ったりすることだ。生活の中で活動の占めるウエートが大きくなり、西成区に引っ越しもした。人生で最後の引っ越しだと思う。
初めての友人
活動を通じ、生まれて初めてできた仲間や友人。90歳にして本当の自分を隠さずに生きることで、人生が楽しいと思えるようになった。若者に勧められて、念願だった女装にもトライしてみた。「化粧って案外めんどくさいな。毎日はいいや」と思ったが、素晴らしい体験だった。好きな人もできた。その人のことを思うといつも心が弾む。
長谷さんには、これまでの人生で何度となく言われ続け、そのたびになんとも言えない嫌な気持ちをため込んできた言葉がある。それは「結婚しないんですか」だ。
社会がLGBTの人たちに寛容となり、昔に比べて住みやすい環境づくりが進んでいることは実感する。だが「同性同士だと子どもができない」といった批判も耳にする。差別や偏見は今も根強くあると感じる。そんな時、「自分で選ぶことができない性を、自ら否定したくないし、誰からも『おまえは駄目だ』なんて言われたくない」と怒りを覚えるという。
今も毎日、日記を書き続けている長谷さん。この先の目標は、同性愛者の老人の性をテーマにした作品を執筆することだ。少しでもLGBTの人々が理解され、暮らしやすい世界になるよう、世論を後押しするような作品を書きたいと願う。
参照元:https://nordot.app/785401544117075968
みなさんの声
90になって、ようやく自分らしく生きられるようになって良かったです。
差別や偏見がなくなって、自分らしく生きられるよう、社会が変わっていくことを願います。
差別や偏見の発言を平気でする議員さんたちは、もっとこのような苦しんでいる人のことを学ぶべきです。
人生はやり直しもきかない、一度限りのもの、自分をさらけ出すのは勇気がいったと思うがこうして自らを発信できることができて素晴らしいし凄いと思う
人間として尊敬
ネット上にも偏見や差別の発言は多く見られる。
みんな、一人ひとりが気をつけないとね。
何も偏見はないけど、オープンにしてる人でも、どこか引け目を感じてたりする。
異性愛者には計り知れない、疎外感みたいなものがあるんだろう。
若いうちから、周りが認めてあげることが大事かも。
生きていて楽しい、幸せと思えるのが何より素晴らしいと思う。
メリットデメリット考えると、昔も今も生きやすさ生きづらさは変わらない。
この方が生まれた頃はかなり少数派が不利な時代。
それでもまだまだ今でも偏見はありますが、やっと勇気を出せば言える世の中になったのかも知れない。もとより言う言わないは自由です。
この方が悪い訳ではないのに、というよりそもそも性別や考え方なんて、人それぞれで良いはずなのに、辛い思いや生き方の選択肢が否応なしに狭められてしまう事は非常に理不尽だと思う。
生まれ持った個性の一つに過ぎないのに。
それでそこから外れる人を異常とか変人とか考える
でも、そうではなくて、いろんな個性がある人が世の中には存在していて
その数が多いか少ないかだけの話
異常でも正常でもない
違う個性の人がいるだけ
それを受け入れられるかどうかだと思います
知り合いに何人かいたけど、差別する人の気持ちが全くわからない。
自分の好きな人がもし同性愛者だったら、(想いが実ることはないから)ショックだなぐらいかな。
生物学的にも一定数発生するし、その人が悪いわけではない。
割合的にもクラスに1人2人はいるレベル。
後ろめたい思いをもつことなく、早くみんなが生きやすい世の中になったらいいなと思います。
「結婚しないんですか?」
私は性的にはノーマルだが、30後半に突入しても独身だった頃、これを言われるのがすごく嫌だった。
結婚しないと決めた訳でもなかったし、自分でもどうなるかよくわからない、
けどレールから外れてるよ、と指摘されてるようで居心地がとても悪かった。
あまり親しくない人物に、なぜ私の人生についてそんなに介入されないといけないのだろうと思った。
意地悪ではなく心から勧めで話している人も中にはいたのかもしれない、と今では理解できるけど。まぁどっちにしろお節介。
この方は結婚するのが当たり前の時代背景だったから、なおさら自分が人と違うことを痛感して辛かっただろうなと思う。
昔はよかった〜とよく語られるが、この人の近年を見ていると、多様性がやっと少しずつ認められてきた今ならではの良い面もあるんだなと思った。
自分が知らないだけで、大昔からあるんだよね。
いつから、性別って男と女になったのかなとか、考えちゃいました。
当事者たちが権利を主張するのは、自らの権利がいろんな場において制限されていて非常に悪い立場に置かれているからであって、性的多数派よりも優遇しろと主張する人は恐らく世界に一人もいません。
だからLGBTの運動がいつまでもなくならないのです。図書館にでも行って、または教育テレビでも見てLGBTを学べば、それがよくわかるはずです。
生物としては可能なことだが、耐えがたい苦痛を味わってきた人もいるだろう。(自身が性愛の対象でない性別(自分の場合は男性)の相手と結婚して生活できるかと考えると無理だ)
この方は90過ぎてようやく自分を解放できてよかったと思うが、頭の中がいまだにアップデートされない人々にとっては、無理矢理結婚して子供を作らせることが正義だと本気で思ってるんでしょうね。
マジョリティのためにマイノリティが犠牲に合うのかというけれど婚姻がマイノリティの犠牲になるのか。ならない。
それを分からず。差別だらけの憲法を唱え続けるならそんなものは破るべき
それと同時に、やはり子供は国の宝だから産みやすく育てやすい環境や養子制度、教育にはお金をかけて力をいれないといけない
自分の方が優性だと位置付ける人よりも、
人としてずっと存在価値があると思う。
彼がゲイであることは、皆知ってたよ。差別や偏見が何を言うのか分からないけど、彼は親の会社を継ぎ、社長として立派に会社を切り盛りし、ゲイのパートナーもいて普通に暮らしていたよ
どちらかというと、世間から認められてきてるのは、異性装する人のほうじゃないかな?
今でも、異性装しないゲイというのは、新宿2丁目にいるガチムチ系の人のイメージしかない…
異性装する人に関しては、女性以上に美しく容姿を見せることによって、その道を切り拓いてきました。その第一人者が美輪明宏さんです。
まあ、この方のように、90過ぎになるまで自分を貫いて生きられるというのは、ある意味素晴らしいことですね。
新宿2丁目のゲイさん達にも、励みになるんじゃないでしょうか…
吐き出せる世の中に変わり良かったですね。
辛かっただろうね。
焼く20年前でそれだから、海外と日本の差はすごそう。
過激なLGBT革命にはうんざりします
それがいつから禁忌になってんですかね?
四国の高地近辺には、戦前までそんな風習が残っていたと何かの本で読んだ事がありますね。
そんなこんなで、個人的には特にそういう方々への忌避はありません。
むしろ、何で今さら「差別だ」と騒いでいるのもかがわかりません。
理解して保護して好かれようとするのが間違いだよ
ただのギャグで言ってるのだと。
って人が殆どなんだけど
実際嫌悪感を抱く人はいて、特に顕著に激しいのが「同族嫌悪」との事
資質を持っていても自覚が無く、自分がなりたく無い気持ちが強く、周囲のGLBTの人を見分けてしまう
激しいフォビアから一転、GLBTに という事例もかなりあるらしい
GLBT差別問題は奥が深く厄介だと思う
まずその人にゲイか?と聞いて、YESと言われたら、今まで誰にも話した事がなかったけれど、自分もで、既婚者の男性と一度だけキスしたことがある、と。
その監督は、話してくれてありがとう、と涙ぐんで感激していた。
もう30年くらい前だったかと、、、。
隠すか、美輪さんばりに突き抜けるかしかなかったのでしょうね。
若い時は良いが年を取ると一人は大変だからという事でしょうね?
しかし一人は大変でも縛られない人の為に嫌な時間を費やす
嫌なこともしないでよいですよ~
独身や結婚しない それはそれで自分が望むのならばよいと思う
人間の人生 子供を産む為や育てる為に生まれた訳ではない
北京で乗り換えてイタリアに行く途中で珍しい?(失礼)優しい感じのチャイニーズ系のゲイの方にお会いした(見るからにゲイぽかった)
乗り継ぎまで話してると隣ではEU系の白人がゲイだ。。。とコソコソ
EUってゲイが多いので有名なのに~
意識して差別はなくすべきですね!
自分は嫌悪感を持つと思います。
これって、差別なのでしょうか?
そのレベルはもう本能的なものでどうにもならないと思います。
そのレベルになると認めるのも自由だと思いますが、否定するのも自由なのではないでしょうか?
繰り返しますが、同性愛が存在することは否定しません。
誰に何かを教えてもらったわけでもなく、女の私は近所の男の子を好きになった
それからもずっと男の人を好きだった
本能なんだと思うんだけど、、、
同性愛の人はなぜ、同じ性の人しか愛せないんだろう
脳の違いなのかな?
その辺はまだ解明出来ないのかな、、、
そのまま墓まで行けば
存在するのは仕方ないがそれを武器に特権をえようしたり
それを政治利用する勢力に日本叩きの道具にされてるのが不愉快。
同性愛者で無い人がそれを否定するのもまた権利なんだよ
こういう人に幸せが来て欲しい
男女と同じように生理的に区別してほしい。
俺は受け付けないしセクハラしても許されると思ってるオカマや笑いで誤魔化すオカマは差別されても仕方がない。
男性教師にいたずらされたんじゃないのかい?
男性が同性愛になるきっかけはそういうことか自信が持てないことが多いのよね
2丁目は賑やかだよ。
なんとも言えん
嫌いだとか気持ちわるいとも言いたくない
せめて関わりあう事を避ける事だけで勘弁してください。
自分ではどうする事も出来ない。
左利きでさえ小さく生きにくさを経験した。
全ての人が自分らしく生きられる社会になりますように
と、当人は必死に生きてきただけなんでしょうけど、私の世代から見れば小説のような人生に敬服します。ぜひ自伝を書いて頂きたいです。
ほんと絵に描いたように羨ましがられる人生だったけど…
90歳でいきいきと幸せそうなこの人をみると、幸せなんて、大企業にも結婚にもないんだろうなと思った。
振り返って自分は、こんなに生き生きやれてるか、ということを突きつけられる
それは自分が恋愛を経て、結婚しているからそう思うのかもしれない。
この方は自分を隠しながら生きて、自分の想いが成就することがなかったから、ずっと若い頃の苦しみを80歳過ぎるまで抱えてきたのかと思うと複雑だ。
でもその想いが成就できそうな今が彼にとっての青春なんだと思うと、本来なら終活を考える歳であっても生きる希望や楽しみがあって幸せなんだろうなと思う。
これからの人生をまさにこれから謳歌してもらいたい。
世の中生涯未婚率は男性で30%といわれてるし、裏を返せば異性愛者でも恋愛弱者で、恋愛も結婚もままならない。という人も多いんやと思う。
苦しさの形は違うが、LGBTの人と異性愛者でも愛に報われない人。苦しみは同じなんやないか?思う。
性的志向、恋愛、結婚などは生物の根幹の部分でここが揺らぐと人生の大半を否定されたような気になるが、それだけが人生ではない。
淀川さんが幸福な人生を歩まれたのは映画という唯一無二の好きな事に出会えたから。
92歳のこの老人も晩年、演劇というモノに出会えて人生変わった。
一つの価値観に囚われず生き甲斐を見つける。
それが幸福に繋がる
人生の師匠から学べる事は多い
生まれたままの性別で生きてることに、疑問を感じたことはないですか?
もし体が女で心が男だったら
もし体が男で心が女だったら
仮に今、家族友人に「私は同性愛者です」とカミングアウトしたら、どんな反応が返ってくるだろうか
自分の秘密を守る重圧から解放された今こそがこの人にとっての本当の戦後なのかもしれない。
異性愛者の男性でファッションに興味なくても、女性の興味を引くために化粧したり衣服に拘ってみたりするのと同じ。そして、案外やってみると新鮮で楽しかったりする。
迷惑かけなきゃ男女どちらを好きでもかまわない
ただLGBTをかたる性犯罪をなんとかしてほしい
人それぞれなんて誤魔化さないで基準を作ってくれ
しかし人間心理として少数の排除と言うのは心理学上存在する。
差別までは行かないが嫌悪感を持つ人はいるし持つのは悪い事ではない。
性マイノリティを差別するなと言うがsmやスカを受け入れいない人がいるのと一緒で男色を受け入れないといけない風潮の社会は絶対間違えている。
主義思想は人それぞれ。
性同一はガチの病気だから哀れに思う。
コメント