狂犬病ウイルスには人間を含めたすべての哺乳類が感染します。
そして、狂犬病ウイルスは唾液中にたっぷり存在しており、感染した動物は凶暴性を増すため、人への感染は感染動物に咬まれたり、引っかかれた傷に唾液が付着して起こることがほとんどです。
その他の感染経路の例としては、感染動物に目・唇など粘膜部を舐められて感染した例や、ウイルスに感染したコウモリが生息する洞窟に入ったことで、気道から狂犬病ウイルスに感染した例があります。
ゾンビ映画のように狂犬病に感染した人間が他の人間を咬むことで感染した例はいまのところありませんが、狂犬病に感染していたドナーの角膜、腎臓、肝臓などを移植された患者が狂犬病ウイルスに感染した例があります。
感染してから発症するまでの時間
傷口などから感染したウイルスは神経を伝って脳を目指して全身に広がりながら移動します。
狂犬病ウイルスが体内を移動する速度はそれほど早くはありません。移動する速さは一日で数ミリから数十ミリと言われています。
そのため、感染してから発症するまでの潜伏期間は、一般的に、脳から遠い部位を咬まれたほうが長くなり、発症率も低くなる傾向にあるようです。
犬では、約80%が10~80日の潜伏期間を経て狂犬病を発症しますが、長い場合は1年以上かかる場合もあります。
人間では、約60%が30~90日で発症しますが、なかには10日以内で発症したり、7年という長い潜伏期間を経て発症した報告もあります。
ちなみに、症状が現れる前に狂犬病の感染の有無を診断することはいまだに出来ません。
人間が狂犬病の初期症状…発症するとどうなる?
狂犬病の初期の症状は、熱、頭痛、吐き気、などインフルエンザに非常に似ていると言われています。
そして、強い不安感、一時的な錯乱、水を見ると首の筋肉が痙攣する(恐水症)、冷たい風でも痙攣する(恐風症)、麻痺、運動失調、全身痙攣が起こります。
その後、昏睡状態に陥り、呼吸麻痺を起こして死に至ります。
狂犬病は「恐水病」とも呼ばれますが、これは神経がウイルスに感染することで過敏になり、水を飲もうとすると、水の刺激で反射的に強い痙攣が起こり、水を飲むことを恐れることによるものです。
また、こうした症状は、水だけでなく光や風などの刺激でも起こります。しかも、このような症状が起きるときの意識は明瞭なため、強い不安と恐怖を伴うのが特徴です。
狂犬病の2種類の症状~攻撃型か麻痺型か~
狂犬病の症状には狂騒型と麻痺型と言われる2種類のタイプがあります。
狂騒型では、極度に興奮し攻撃的な行動を示し、他の動物を咬むことがあります。犬では狂犬病の70~80%のケースは狂騒型と言われています。
また、麻痺型は動物を咬むことが少ない症状で、狂騒型の狂犬病よりも劇的ではなく、長い経過をたどります。
筋肉は徐々に麻痺し、昏睡状態がゆっくりと進行します。
しかし、症状がどちらの型だとしても、狂犬病は、いったん発病すると有効な治療方法は確立されておらず、死亡率はほぼ100%という非常に恐ろしい病です。
狂犬病から回復した少女と治療した医師
狂犬病に感染した場合、発症前であれば直ちにワクチン接種と免疫血清の投与を行うことで発症を防ぐことができます。
狂犬病ウイルスは神経を伝って脳に広がるまでに時間がかかるため、免疫血清とワクチンによる免疫が脳内でのウイルス増殖を阻止し、発症を防ぐと考えられています。
一方、先に述べたようにウイルスが脳に達し、発症してしまうと、治療法がなく、助かることはないとされてきました。
ところが、米国で2004年に狂犬病にかかった15歳の少女が、狂犬病の発症後であるにもかかわらず回復した例が報告されました。
その少女は、病院で診察を受けた際、すでに疲労感、嘔吐、視野攪乱、精神錯乱、運動失調などの症状を示しており、診察時は脳炎が疑われました。
その後、すぐに症状は増悪し、唾液過多、左腕の痙攣などが出現してきました。しかも、少女の両親の話では、4週間前に教会でのミサの最中に窓にぶつかって落ちたコウモリをつかまえて外に出そうとした際、少女は左手親指を咬まれたとのことでした。
アメリカではコウモリから狂犬病ウイルスに感染することがしばしばあります。
そして、ウイルスの検査をした結果、少女の血液と髄液で狂犬病ウイルス抗体が見つかります。
髄液から狂犬病ウイルス抗体が発見されたということは、少女の脳内にまで狂犬病ウイルスが広がっているということになります。
それは絶望的な結果でした。なぜなら、それまで、脳内がウイルスに侵されて助かった人はいなかったからです。
しかし、少女を担当した医師は諦めず、狂犬病ウイルスに関する様々な文献を調べて、脳にまで感染が広がっている少女を救うための治療のヒントを見つけようとしました。
様々な文献の情報から、狂犬病ウイルスは脳の細胞を破壊しておらず、脳からの神経伝達を侵すことで、脳からの指令が臓器に届かなくなり、その結果として心臓の活動や呼吸といった機能を破壊し、死に至らしめようとしていると考えられました。
これらの情報から実験的な治療計画を立て、動物実験で狂犬病ウイルスの阻止効果が見られた麻酔薬で昏睡状態に誘導します。
これは、脳の活動を抑え、少女の免疫系が抗体を分泌してウイルスを撃退するまで彼女が持ちこたえることを期待してのことでした。
そして、抗ウイルス薬を投与します。
すると、少女は7日間昏睡状態が続いた後、徐々に回復し、2か月半後には退院することができました。
この治療は「ミルウォーキー・プロトコル」と名付けられました。
この治療法は人の狂犬病治療における実験的な処置方法で、これまで50名以上に実施され6名が回復したと報告されています。
ウイルスが宿主の攻撃性を引き出す仕組み
ウイルスは、細胞機構も持たず、生物かどうかも怪しい存在です。狂犬病ウイルスは5つの遺伝子しかないにもかかわらず、高度な免疫および中枢神経系を持ち、2万を超える遺伝子を持つ犬の行動を変化させることができます。
これまで、単純な構造しか持たない狂犬病ウイルスが宿主の脳を乗っ取り、感染した宿主をどのように狂乱の攻撃状態に陥らせているかはほとんど不明でした。
しかし、2017年にアメリカの研究チームによって、ヘビの毒素と起源が一緒だと考えられる狂犬病ウイルス糖タンパク質の領域には、動物の中枢神経系に存在するニコチン性アセチルコリン受容体を阻害する作用があるため、宿主の攻撃行動に影響を与える能力を持つ可能性が示されました。
参照元:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191220-00594250-shincho-sci&p=1
みなさんの声
乗せられるな︎
と言う持論をお持ちの方々に是非ともジックリと読んでいただきたい情報です
海外では野犬が放置されている国も多くある。
海外旅行にいくなら狂犬病のこと予防接種(?)をした方がいいといいますね。
定期的に受けないと効果が持続しないそうですが…
むやみやたらと、「可愛い~!」と、野生動物に触るな。
周りや大切な家族(ペット)が危険にさらされないように予防接種は必ず受けて欲しいです
狂犬病は全ての哺乳類に感染するのに。
この記事に書いてあるけど、そもそもは狂水病と呼ばれていたはず。
犬飼ってるけど毎年打ってる。
本当は混合ワクチンのように毎年抗体価検査をして抗体がなければ打つとしたいところだけれど、義務だから、打つ打たないの選択肢がない。
ハイシニアや持病など健康上に問題があれば延期証明書を出してもらわなければならない。
定期的にSNSで医師が注意喚起していますね
変な優しさで手を出しては行けない。
これを理解しない、特に若い女性が多い気がする。
凄く印象に残ってます
この処置法50分の6名しか助かっていないということは感染度合いとタイミングが良くないと難しいということですよね
極々稀に回復する可能性はあるが致死率は99%を超える不治の病であり、野生動物と接触し裂傷等を受けた場合は医療機関の診察を受けよ
と言ってたわ。
見つかっていないだけで狂犬病は入ってると思う。
そのうちパニックなりそう。
自分も知らない犬に噛まれ半年、未だに傷が疼きます。
破傷風なら打ったが狂犬病だと発症までわからないとか今でも怖いです。
日本ではあまり聞かない狂犬病ですが海外では当たり前に感染しますからね。
猫にも接種義務付けて欲しい
みたいな軽い気持ちでコウモリについて検索したら狂犬病の危険性とかいっぱい出てきてびっくりして病院行った。
暴露後接種に5回通って時間も金もかかったし注射のたびに熱も出た。
でも終わってやっと安心したよ。怖いよね。
あと高いから毎年なんてしないとか。
ペットも登録制にして国か自治体が管理して、ワクチンうたなければ罰金とかにして欲しい。
海外に行く時はワクチン接種は是非に
海外ではワクチン接種されてるのか…怖いですね。
私が子供の頃、よその飼い犬がお腹を噛んできたことがあったわ。
あれから犬は無いな、と思っている。
狂犬病という病名が勘違いさせる。
確実に半年位で亡くなる恐ろしい病です
因みに狂犬病はコウモリが始まりらしい。
がっ!
韓国、中国、インドなど、外国では今だにある。こんだけ人が行き来し、動物だって密輸入したりコンテナに乗ってきたりとかあるのに。
気を付けましょ。
犬にとっても人間にとっても大切なこと。それが飼い主としての責任で、予防接種が出来ないのならば飼うべきではない。
ついでに野良猫もどうにかしてほしい。
狂犬病(別名:恐水病)を発症するイヌやヒトが相当数いたんだ。
身近に見ないからと言って根絶できた訳ではない。
たまに色々と獣医さんを貶しながらお金ケチってワクチン打ちに行かない人を見かけるが、愚の骨頂だと思う。
発症したらペットだけでなく、飼い主や周りの人の命も危険に晒す事になるんだからな。
僅か数千円程度の出費で、愛すべき存在の命を守れるなら安いものだと思う。
そう思えないならペットなんか飼うな。
狂犬病は犬だけじゃないことを。
ヌートリアに噛まれると狂犬病に感染する可能性があることをせめて学校で教えなければなりません。
自然界にいる動物、野良、飼っていても予防接種を受けていない動物等無闇に近づいてはならないと教えるべきです。
動物の寄生虫も全員でやらないと効果が無いと思います。予防接種などルールを無視する、またはそれが出来ない人は、媒介の種となり周囲に迷惑を掛けるので、ルールを守らせる。出来ないなら飼わない。ちゃんとやっている人に対して迷惑。
しっかり予防接種受けてるから、狂犬病が出てこないだけ!こうして狂犬病を消滅させてきたんですよ!
外国から飛来してきたコウモリに咬まれて狂犬病になることを、なぜ想像出来ないのか?
どうせならない、ならなかったら費用がもったいない、こういう理由で健康診断や予防接種の費用をケチる人が一定数いるけど、そういう人に限って、スマホやパソコンのセキュリティにお金かけてたり、中途半端なレベルのブランド品で身を固めてたりするんだよなぁ〜。
一番大事なのは、健康、安全!
狂犬病に関しては義務だし、義務ってことはちゃんと理由があるからです。ここケチる人に動物飼う資格はないですよ!
管理人の率直な感想
最後にコメントしている方の仰る通り、日本に狂犬病がなくなったのは予防接種のおかげなんですよね。
ちょっとスケールは小さくなりますが、今どき頭にシラミを飼ってる人もいないでしょう。
昔々は当たり前のように飼ってる人がいて、子供たちは学校で薬剤を頭に噴霧していた。
そんな予防の積み重ねがあり、今の状況があるわけです。
外来種や海外渡航者によって狂犬病ウイルスが入ってくる可能性がある。
自分や家族が感染したとき、日本にこの記事に出てくるような医師がいるでしょうか。
限りなくNOでしょう。
「回復事例はあります」という記事でもあり「予防接種はしましょう」というお話でした。
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