人類の歴史とほぼ同じ長さを持つ、兵器開発の歴史。
その歴史は真面目な物だけではない。
安全保障関連の書籍を数多く手掛けてきたジャーナリストの伊藤明弘氏は、「これまで開発された無数の兵器の中には、『それは本気なのか』と突っ込みたくなるようなヘンな兵器がたくさんある」という。
※本稿は、世界兵器史研究会『ざんねんな兵器図鑑』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
撃つ前に首を鍛えないと気絶する銃
第一次世界大戦ではさまざまな近代兵器が発明されましたが、なかには「ヘルメット銃」なる珍兵器もありました。この銃は、文字通りヘルメットと銃が合体してしまったヘンテコ兵器です。
1910年代にアメリカで設計されたこのヘルメットの特徴は、ヘルメットの上の部分に銃が付いていることで、かぶった人の目線に合うように照準器も付けられています。撃ち方は簡単で、ヘルメットから伸びる細いチューブを口に含み、息を吹くだけ。するとチューブから空気が送られ、自動的に弾が発射される仕組みになっています。
このヘルメットを使えば、目標を正確に撃ち抜くことができます。頭を向けて目標を見ることが、そのまま銃の狙いを定めたことになるからです。しかし、そこには致命的な欠点がありました。銃を撃ったときの衝撃がダイレクトに首に伝わり、間違いなく首を痛めることになるのです。だから、実用化はされませんでした。
武器がイラストだったハリボテ戦車
戦車の開発は、第一次世界大戦で起こった塹壕戦からでした。強力な塹壕を突破するために、各国はこぞって戦車を開発しようとします。1915年にフランスで開発されたフロト・ラフリーは、そんな最初期の戦車の1つです。
この戦車は全長7メートル、高さ2.3メートルで、とにかく壁のように大きく細長いのが特徴。計画では前と後ろに機関銃4門を搭載し、さらに左右それぞれに大砲2門、機関銃6門を載せたとても強い戦車になるはずでした。
しかし、実はこの戦車、あまりに開発を急いだので、武器を載せるのが間に合いませんでした。テスト走行でお披露目されたフロト・ラフリーは、左右に載せるはずだった大砲と機関銃を、実物に近い「絵」でごまかしてしまったのです。なので、実際に載っているのは車体前後の機関銃だけ。こんなだまし絵みたいな戦車で性能も悪かったので、当然、不採用となりました。
どこに飛んでいくかわからない爆弾大車輪
パンジャンドラムは、1940年代にイギリスが開発した走る爆弾です。敵のトーチカに突っ込ませて爆破する使い捨て兵器でしたが、完成したのは爆薬を詰めた本体を巨大な車輪で挟んだだけのシロモノ。車輪についたロケットモーターの力で、車輪を回して前進するようになっていました。
さて実験してみると、ロケットの力がバラバラでうまく前進できずに横転したり、それどころか急に向きを変えて味方のいるところに突っ込んだりといっためちゃくちゃな動きをしたため、不採用となりました。この見た目とインパクトから、今日では珍兵器の王様としてよく知られています。
全長600メートルの氷でできた巨大空母
第二次世界大戦中、連合国はドイツの潜水艦Uボートによる攻撃に悩まされており、反撃する方法を探していました。この話を聞きつけたイギリスのジェフリー・N・パイク博士は、とんでもない計画をまとめあげました。氷でできた巨大な航空母艦、通称「氷山空母ハボクック」です。
この空母は全長約600メートルもあり、空母というより人工島に近い性質を持っています。搭載できる航空機の数も150機と桁違いです。そして材料はというと、ほぼ全て氷の塊。パイク博士は氷と木材を混ぜたコンクリートならぬ「パイクリート」を自作して、船に使おうとしていました。氷はいつか溶けてしまいますが、内部に冷却器を大量に追加することで船の形を保ち、もし敵の攻撃で損傷しても、海水を凍らせてくっつければ修理できるので、「絶対に沈まない」というのがこの空母のウリでした。
早速アメリカ、イギリス、カナダの3ヵ国が協力して計画が始まりましたが、試作してみると運用にものすごいお金がかかることがわかり、計画はたった1年で「凍結されて」しまいました。
交代制で飛行中に休憩できる戦闘機
B‐29などの戦略爆撃機は、長い距離を飛んで爆撃任務を行います。爆撃機を守る護衛戦闘機のパイロットは、その間ずっと1人で機体を操縦しなければならないため、非常に大変です。こうした事情からアメリカ軍は、パイロットの負担が少なくて済むように、2人交代で操縦できる戦闘機の開発を求めました。その結果、普通の戦闘機を横に2つつなげるという、とてもおかしな形の飛行機が1946年に登場してしまったのです。
F‐82ツインマスタングは、P‐51マスタングという戦闘機の翼同士をつなげた形をしています。コックピットもちゃんと2つあり、どちらか一方のパイロットが休憩中でも、もう片方のパイロットが操縦できるようになっていました。
一見すると合理的な考え方ですが、さすがに2つの機体を直接くっつけるのはうまくいかなかったようで、翼を再設計したりエンジンを調整したりと、普通に造るより余計に手間がかかってしまいました。
ドイツの鬼才フォークト博士の珍作
普段はあまり意識しませんが、飛行機は左右対称が当たり前。なぜなら、そうしないと機体のバランスが崩れて墜落してしまうからです。しかし、そんな飛行機の常識を超える左右“非対称”機にこだわった設計者がいました。その人物はドイツのリヒャルト・フォークト博士。彼が考えた飛行機で最も有名なのがBV141です。
BV141はエンジンとコックピットが別々に分かれたヘンテコな形をしています。これは「見晴らしのよい偵察機を造る」という考え方から生まれたもので、確かにこの形ならエンジン部分が邪魔にならず、とてもよい視界が得られます。問題はその性能ですが、実際に飛ばすと思いのほか安定しており、軽やかに飛ぶ姿は関係者を驚かせました。
結局BV141は採用されませんでしたが、フォークト博士はこの経験から、斬新すぎる形の飛行機をどんどん設計していくようになります。そのなかからほんの一部をご紹介しましょう。
なぜそんなに左右対照がイヤなのか
次にご紹介する飛行機はBV P.111というもので、前と後ろのパーツが左右にずれてしまっています。飛行機を真ん中で真っ二つに切ってしまったら、こんな形になるのでしょう。性能についてはよくわかっていませんが、果たしてこの飛行機は本当に飛ぶことができたのでしょうか。それすら疑ってしまうほどヘンテコな形をしています。
コックピットがない?
最後に、フォークト博士が考えた珍飛行機のなかで、最もヘンテコなものを紹介します。BV P.163は、一見するとコックピットがどこにも付いていません。ではどこにあるのかというと、なんと、主翼の両端。こんなヘンなところにコックピットを付けて、パイロットはちゃんと飛行機を動かせるのでしょうか。主翼が左右に広がっているのでコックピットも2つあり、左側が操縦担当で、右側は機関銃担当になっていました。こんな飛行機を本当に飛ばそうとしていたら、パイロットだってたまったものではなかったでしょう。
参照元:https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191219-00031487-president-soci&p=1
ネットの声
ヘルメットをかぶっただけの状態では安定せずヘルメットにハイポッドもしくは安定させるためのグリップをつけて両手で握ってやれば、なんとかなるという結論だったけどそれじゃ意味ないよな。
普通はアイディア倒れになる物も実際に作っちゃうのは恐れ入る。
そこには設計者や企画者の執念を感じる。
どう見ても役に立たない物も作ってしまう。
ある意味思考や発想が凄いのか麻痺して狂っているのかもしれない。
日本でも、軽機関銃の設計にあたり、使い捨ての弾倉を作るのがもったいないからと熊手のような装置を付け、機関銃が弾を自分で掻き込んで装填するようにしたら、現場で作動不良が相次ぎ、とんでもなく不評だったということもあった。
日本の場合は、貧者ゆえの工夫だけど、兵器には、それぞれの国がおかれた状況等が、色濃く反映されるわけで、たんに笑うだけでなく、状況、歴史まで含めて、興味深く見るといいと思うよ。
技術の発展や運用法、兵器の本質が分かってから初めて価値が見えてくるもの。
まあ、障害物突破の為のジャンピング戦車とか、隠れたまま撃てるヘルメットガンや曲銃とか、違うそうじゃない、とツッコミしかない珍兵器があるのも事実だが。
当時は珍兵器だけど、今考えれば時代の先取りだったのではという兵器もいろいろあるし、未来では発展した珍兵器が実用化されてるかも。
(日本軍の潜水空母伊400型も当時は奇想天外兵器のレベルだけど、潜水艦に航空機を搭載して長距離攻撃というアイディアは航空機→ミサイルという形で、現在では潜水艦発射型弾道ミサイルとして実用化されてる)
中には当時の技術力の問題で駄目だった奴も有るのが面白い
とはいっても英国面が大きい気がする珍兵器
てのはともかく、ロシアの円形戦艦も入れてあげて欲しかったな。
イギリスのポールトンポールデファイアントなんかもたいがいやけどな。
そうそう、フランス潜水艦のシュルクフもね。
今の日本のダメなとこは、そういう失敗を許容する余裕のないこと。失敗できる環境づくりが大事だと思う。
フライトシミュレーターで本機の視界を確認しましたが、長い胴体のある左側は、目の高さよりやや下の視野が広範囲にわたって制限され、普通の双発機よりずっと劣ります。偵察機としては致命的ですし、一般的な左回りトラフィックパターン(着陸誘導コース)を回るのさえ不便です。実用化されなかったのは当然では。
ご参考までに書き添えますと。フライトシミュレーターの機体は、飛行性能は必ずしも実物通りとは限りませんが、三面図から3Dモデルを起こしていますので、パイロットから見た視野は、ほぼ正確に再現しています。現代では実機を作る際、モックアップ(原寸大模型)の代わりにCADでパイロット視界などをチェックしますが、あれと同じことです。
塹壕から頭ださずに撃ちたい辺りが着想だろうから無駄の多さはともかく必ずしも意味ないとは言えないが
WW2の戦車でもやはり精度に難があるにもかかわらずリモコン機銃が設計されてる
敷設後に砂糖が浸水して信管まで達すると機雷は無効化される。
ある意味珍兵器だな。
てか、パンジャンドラムを見る度に機動戦士Vガンダムの敵のザンスカール帝国のタイヤ型兵器のアインラッドとツインラッドを思い出すわ。
セグウェイの二輪で立つ技術とか現在の駆動制御を応用したり
GPS搭載して指向性を持たせたりしてやれば、多数の車両で
敵陣地に飽和攻撃!とかすごい兵器にできそうな気もする。
敵戦車に地雷を仕掛けるよう、犬に特殊訓練を組ませる。
いざ、実戦投入したら、犬(地雷付き)は敵陣地ではなく、大好きなご主人様のいる方へダッシュしてしまう。
【鳩ミサイル】
まだ、機械の発達が不十分だったころ。
エサを報酬に特殊訓練を組ませた鳩を搭載した、ホーミングミサイルを発案。
鳩がつついたボタンの方に曲がる仕掛け。
実験はある程度、うまくいっていたが、「やっぱ、鳥に運命任せるのはダメなんじゃね?」という声で、開発は中止された。
今だと、動物愛護団体が激怒しそうな珍兵器。
そして「きっとこれらは真剣に考えて生み出された(?)はず」とか思うと、ますます笑いが。。。
必死だったんだろうな。
必死だったんだろうけど、ちょっと間違ったんだろうな。
その「ちょっと間違った」が、平和だとここまで笑えてしまうのが何とも。
考え出した人に申し訳ない。
申し訳ないと思いながら、また思い出し笑い・・・(^_^;)
いったん、パイロットを守らず、エンジンも付けないという前提にしてしまうと、クイクイ曲がる飛行機ができ、技術者は面白かったらしい。
発想は良かった。
試験する前にわかりそうな物がかなりあるけど。
今となっては笑い話になっている、というだけの話で
記事中の「パンジャンドラム」を技術の進歩で実用化したのが今話題のドローン爆弾である。
単発プロペラ機の場合プロペラの回転の力が有るために左右の翼の長さや形が違っていたりしますよ
確か回転させるロケットの出力が弱くて泥の原っぱでスタックしてた。でその後はお約束の火達磨状態でわろた。
駆り出されたものの、アメリカの爆撃機にあっさり見ぬかれてスルーされ軍の人に殴られたって話してたな。
センサー集中してそうな頭部に、バルカン二門とか、振動凄そう。
ZZなんて、メガ粒子砲とか集束出来なかったメガ粒子で、微少穴が空きまくってそう。
7000tの船体に15インチ砲2門搭載、どう見ても主砲撃ったら転覆しそうなデザインが凄い。しかもWWⅠならともかく40年代に新造艦造ってしまう英国面(笑)
60mmっていったらほぼ戦車砲だぞ。これを連射するって何事か。首が飛んでくか、ひっくりかえるわ。
なんで20ぐらいで我慢できなかったんだ、設定作った人。
となんども思った。
>試作してみると
>「絶対に沈まない」というのがウリ
「絶対沈まない」というが「絶対溶けない」とは言ってないのがミソ
しかも一度作っちゃったのかよ……(呆れ
経緯を知ると合理性の塊なんだよなぁ
レーザー兵器が小型化されたとき、「エメリウム光線」という名で復活するだろう。
その発想はヘルメットに銃を付けた事が起源なんだろうか・・・
ドイツの「ゴリアテ」の先祖みたいな。
>氷山空母ハボクック
ゲーム「鋼鉄の咆哮」では、コイツと戦えます。火炎放射で炙るのが吉。(指揮90以上のレールガン乱射でもいいですが。)
「連発式火縄銃」なんてのがあったし、終戦前には「人間魚雷」や「人間機雷」なんてのがあった。
隣の韓国には「鶴羽船」なんてのがあった。
これは船体を軽い鶴の羽で作り、蝉の下腹みたいな鞴を伸縮させて空を飛び、更には水に浮かんで航行出来る水陸両用の飛行船だった。
大車輪やら前に撃てない戦闘機やら氷山空母やら……
そんなものを未だに本気で信じてるのは日本人だけ。
バズーカなら無反動なので無問題。
結局沈められなくて、氷山空母ごと地上部隊で占領しちゃうんだけど。
戦艦大和並の防御力を持った空母のはずが、あちこちから水漏れして、4発の魚雷で沈没。
竣工から10日で沈没は世界最短記録。
パイロットを爆弾の付属物として扱い、使い捨て。
誰が考えたのかは知らないが世界で一番バカな兵器。
管理人の率直な感想
探偵ナイトスクープを観ていると、日本にも各地に「自称エジソン」がいて、実にアホな発明をしているのが分かります。
大概は爺さんなのですが、彼らはいたって本気。
大マジなんです。
マジでアホな発明を続けている。
でも、僕はそういう人が好きです。
何事にも良し悪しがあって、アホにも「良いアホ」と「タチの悪いアホ」がいる。
アホな発明をする人はご多分に漏れず良いアホです。
ただし、今回の記事の発明は兵器ですからね。
人を殺傷するための発明ですから称賛は出来ない。
ん?採用されたら敵より先に自滅するのでどっちみちダメなのか。
ボツにした人がまともで良かった。
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